喋りすぎる猫

【ミドル編】

30年ぶりに映画「愛人/ラマン」を観る。わたしが恋したあの人は、今…

最近、どおーーしても思い出せないことがあり、とてもモヤモヤしておりました。
かれこれ2ヶ月。


仕事で新しく出会った10歳年下の男性が、誰かに似ている。
マスクをしているので目元のみの認識ですが、絶対誰かに似ている。
でもその誰かが、思い出せないのです。



思い出せないということは、忘れているということ。
当たり前だけど、忘れる前は覚えていたのです。
さあ、どの引き出しに入れたかな?


男前風の涼しい目をしています。
朗らかでよく笑うのですが、笑った時の感じもよく似ている気がします。
なんだか懐かしくて、ちょっぴり切ない。
…もうこれ、恋ですやん。


思い切って正面から見つめてみる。
まっすぐ見つめ返してくる、やさしいまなざし。
さすが営業マンです。


昨日のこと。
なぜか唐突にある古い映画が観たくなりました。


1992年に制作されたフランス・イギリスの合作映画。
作家マルグリット・デュラスの自伝的小説を原作にした「愛人/ラマン」をご存知?
もう30年も昔なんですね…


舞台は1930年頃のフランス領インドシナ。
ジェーン・マーチ演じる貧しいフランス人の少女と、レオン・カーフェイ演じる若き中国人華僑のお話です。
少女は15歳半。
彼は32歳。


この2人のラブシーンが、それはそれはいやらしくて美しいのですよ。
昨晩遅く、30年振りに見ました。
わたしは「愛人/ラマン」のブルーレイディスクを、未開封のまま持っていたのです。
これを手に入れたのは、今から7年くらい前でしょうか。


若い頃のレオン・カーフェイは、ちょっぴり顔はでかいけど、上品さと精悍さを併せ持った「ザ・映画俳優」なイケメンです。
「美男子」という言葉が似合う。
作中で彼が背広の内ポケットから札入れを出し、紙幣を抜く時の洗練された仕草には惚れ惚れしますよ。


中国人華僑の彼には、許嫁(いいなずけ)がいます。
少女の方は、母親と兄とともにフランスへ還ることが決まっている。
引かれ合う2人の間には、「お金」が生々しく存在しています。


彼にとっては、結ばれない恋。
自分が「金持ち」であることで、逆に自信を失ってしまうほどに、少女を愛してしまいます。


対して少女が夢中にになったのは、初めての性愛。
だったかもしれません。
最初はね。
原作の方にも、そんな描写が見られます。
しかし15歳半の少女に、性愛と恋の区別などあったでしょうか?


などと考えながら観ていたのですが。
彼と少女と、少女の母親、2人の兄がいやーな雰囲気で食事をしているシーンで、はっと気づきました。


少女の家族に受け入れられようと、一生懸命作り笑顔を浮かべる彼。
少女と2人きりの時より、大人で、社交的な雰囲気を出しています。
この時のレオン・カーフェイに、見覚えがありました。


これだ!


件の男性は、レオン・カーフェイに似ていたのです。
目元だけね!
目元だけ!


気づかないのも無理はありません。
身長も、等身も、スーツの着こなしも、目元以外は何もかも違うんですもの。


それにしても、人間の記憶って不思議!
本当に、何の前触れもなく、あの映画が観たくなったのです。
記憶の深ーい深ーい深ーいところに、30年前にほんのり恋してしまったレオン・カーフェイの存在があったのでしょう。


レオン・カーフェイと、典型的日本の営業マン(しかも関西人)に、共通点など皆無に思われましたが。
わたしの脳内で僅かな一致が確認され、か細く繋がっていたのです。
恋じゃなかったー笑
モヤモヤが晴れて、すっきり。
と同時に、ブルーレイのパッケージを破ってしまったことを後悔。
未開封なら、高く売れたかも!?


一応、メルカリで相場を確認してみると、新品のDVDで2,000円~2,500円というところ。
ブルーレイならもっと高値で…
なんて嘘〜。誰にもあげませんよ。
VHSで1度見たきり30年間観なかったけど、本当に大好きな映画なのです。
原作となった本も、長らく読み返していないけれど、大事に持っています。



ところで、わたしが恋したレオン・カーフェイは、今どうしてるんだろう?
ネットで画像検索してみると、とてもやさしそうなオジサンになってました。


現在63歳。
面影は十分にあり、そう思うと30年前の「彼」も普通のいい人に見えてきちゃうわ。
いい人には違いないんですけど、普通のではないんです。
普通のいい人は、15歳半の少女を「連れ込み部屋」に連れて行ったりしない。
そして不能になるまで苦悩したりしない。


わたしはきっと、レオン・カーフェイが好きというより、「彼」が好きなんですね。
フランス植民地時代のベトナムで、運転手付きの黒塗りの車を持ち、震える手で少女に煙草をすすめる「彼」が。
映像になった「愛人/ラマン」を観た時。
活字で何度も読んでイメージした通りの「彼」があらわれて、震えるほど驚いたものです。


最後に。
レオン・カーフェイに関して最もぶったまげたこと。
それは、中国版「深夜食堂」に主演していたこと。
しかも監督までしてたこと。



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