我が家のごはんは、同居人のK介さんが作ります。
でも彼は主婦(主夫?)ではありません。
そしてわたしも、主婦ではない。
働いてるから、という意味ではなくです。
うちには「家事」という概念がありません。
気が向いた人が気が向いた時に洗濯し、気になった人が掃除をする。
ゴミは前の晩に2人で散歩がてら出しに行ったり、わたしが朝出したり。
2週間溜めたり。
何時に何をするとか決まっていません。
基本面倒くさがりで細かいことは気にしない、テキトーな人同士で暮らしてるとこうなります。
そんな中で、K介さんが毎日ごはんを作るようになった経緯(いきさつ)は、わたしの心身の不調にあります。
40歳を超えたあたりから、わたしは徐々に弱り始めました。
昔はバイトを2つ3つ掛け持ちしても、へっちゃらだったのに。
1日7時間、家電屋の店頭に立つのがつらい。
もう、横になっててもしんどい日が続きました。
症状としては、頭痛、立ちくらみ、動悸、急に体がほてる、など。
更年期障害確定ですよね。
職場は男ばっかりなのに非常に理解があり、当日欠勤OK・早退OK・遅刻OKな柔軟過ぎる対応をしてくれました。
派遣会社とクライアントのメーカーも、「お店がそれでよければOK」という姿勢。
元気な時のわたしの販売力を、信じてくれていたのね。
ほんとに感謝しています。
こうして、更年期女性にとって夢みたいな待遇を手に入れたわたしですが、大きなストレスが残っていました。
「今日のごはんどうする?」です。
K介さんに悪気はありません。
わたしの帰りを待って一緒にスーパーへ行き、メニューを決め、2人でキッチンに立つ。
それをずっと続けてきたのだから。
でももう無理。
わたしにはもう、そんな気力も体力もない。
家に帰るのが憂鬱になるくらい、億劫でたまらなくなっていたのです。
でもおなかは減ります。
わたしから外食を提案することも増え、家計もピンチでした。
わたしは考えていたことを思い切って言いました。
「明日から、K介さんがごはん作る係だよ。ひとりで全部やるんだよ。頑張ってね」
「えっ!?」
とうろたえる彼。
そりゃそうでしょうね。
「2人でキッチンに立つ」と前述しましたが、料理を習慣としてこなかったK介さんは、わたしのアシスタントに過ぎなかった。
おぼつかない手つきながらなんとか役に立っていたのは、わたしの指示・指導があったからです。
下積み時代が唐突に終了し、調理担当として全責任を負うことになってしまったK介さん。
わたしは相談ではなく、決定事項として述べましたので、彼は突然変わってしまった自分の運命を慌てて追いかけるしかありません。
「…不安だけど、なんとかやってみるしかないね」
決意なのか、あきらめなのか。
わたしの絶不調を隣で見てきたK介さんなので、嫌だとは言わない。
お金に十分な余裕があれば外注で解決ですが、ありませんから。
我が家に自炊は必要なのです。
あれから5年。
K介さんはたくさんの料理を作ってきました。
千乃が高校3年間だけうちにいたので、千乃もK介さんのごはんを毎日食べました。
天ぷらや炊き込みご飯、煮物などの和食が得意なようです。
オムライスやパスタの日は、千乃が喜んで写真を撮ったりしていました。
今はまた2人に戻り、千乃がいた頃より少し地味なおうちごはんになりました。
わたしの不調はというと。
「命の母」を飲んでみたり、婦人科で漢方薬を処方してもらったり、色々試しましたが効果がなく。
特につらかったのが動悸とめまい。
食後に起こることが多く、ひどい時は食事休憩のあと売り場に戻ると、立っていられないくらいクラクラだった。
少しお酒を飲んだだけでキーンと頭が痛くなり、目を閉じると首の後ろでジー…という血流が滞ったような音がしました。
もういやだ、早く元気になりたい。
更年期のばかやろー!!
しかしある日、わたしにとって衝撃的な事実が判明するのです。
レディスクリニックの先生(尾木ママに酷似)に、こう言われました。
「あなたはね、更年期っていうより、高血圧」
わたしはまったく無頓着だったのですが、当時のわたしの血圧は 最高/192 最低/126 あたりが普通でした。
この数値は、すごく高いんですって。
血圧を下げるお薬が出されました。
「高血圧手帳」なるものも頂きました。
こんなの初めて。
お薬は最初は1種類、経過をみて2種類になりました。
すると、なんということでしょう!!
お薬を毎朝2つ飲むようになってから、あんなにつらかった症状のほとんどが、すっかり治ってしまったではありませんか。
「え、こんなにあっさり?」って気が抜けちゃいましたよ。
ちなみに「アジルバ」と「ニフェジピン」という錠剤。
わたしは今、とても元気です。
お薬をやめるとまた血圧がメキメキ上がるので、本当の健康体ではないのだけど。
ゴールデンウィークに6連勤が出来るほどに回復しました。
でもごはんは作りません。
K介さんが、その権利をもう譲ってくれないからです。
わたしはせいぜい、1人の休日のお昼に袋ラーメンを煮るくらい。
昨日の晩は、おうどんでした。
おうどんと、スーパーのお惣菜、お寿司、浅漬け。
ちょっと手抜きだけど。
作ってもらうと、おいしいね。