喋りすぎる猫

【ミドル編】

「家電量販店で値切りに成功!!店員を落とす必殺トークを伝授します!!」とか言ってるのを真に受けてるあなたへ

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いらっしゃいませー。
せー。
今回はちょっと、家電量販店スタッフとして発言いたしますよ。

 

家電の値段って、販売店によってびっくりするくらいの差がありますよね。
大手の量販店から町の電気屋さん、素性の知れないネットのショップまで。
比較してみると10万の差額なんてザラ。
同じメーカーの同じ型番で、「なんでこんなに価格に差があるの!?」となるのは当然のこと。
こんなの見てしまうと、「どうせ買うなら安く買いたい」と考えるのが普通です。
いいんですよ、それで。

 

「値切り」という言葉があります。
値段を下げさせるという意味で、販売を行う店側が使う言葉ではありません。
店側からすると、「値切られる」となります。
受け身ですね。
客の値切りに対して、店側は値引きで応じます。
客が納得するまで、店側は複数回値段を提示することもあるでしょう。
一見すると、客の値切り攻撃を、店側がより少ないダメージ(値引き)で攻防している図式になりますね。
でも、本当にそうでしょうか?

 

値切り自慢のお客様は気づいていません。
自分が完全アウェイであることを。

 

*以降、値切り自慢のお客様のことを、愛を込めて「ネギちゃん」って呼びますね!!

 

値切り交渉術とやらを、ドヤ顔で紹介する動画やブログ記事を拝見しますと、大体ポイントは次の7つのようです。

 

①欲しい商品を決定し、ネットで最安値を調べておく

 

②競合店のチラシ、または見積もりを持参

 

③「この後○○店(競合店)にも行ってみる」と言って焦らせる

 

④購入予定額よりもかなり安い値段をふっかけて、その店の底値を引き出す

 

⑤値切り交渉する相手は、「管理職」を狙う

 

⑥週末、売り上げが足りてなさそうな店員を見定めて追い詰める

 

⑦最後の切り札(処分費込み、別の商品を追加、ポイント付与、など)を用意する

 

笑笑

 

へー、そうなんだ。
では潰せるところは潰していきましょうか。

 

余談ですが、値切って1円でも安く買おうとする人って、選ぶ商品がそもそもショボイですよね。
お店にとっても優先ランク下の下くらいの。

 

ただし、これらは販売してもお店のステータスにはならない代わりに、粗利がやたらとよい場合があります。
少々無茶と思える値引きをしても、実は儲かってたりするのです。
このようなアイテムの特徴としては、展示位置がメインゾーンから外れている、販促物が少ない、ポイントアップや無金利ローンの対象外である、などが挙げられます。

 

で、いよいよ最終処分となった暁には、アホみたいに安い値札が貼られる運命です。
それはもう、一分一秒コイツを売り場に置いとくのは無駄!という扱い。
それはネギちゃんが知恵をふりしぼって値切り交渉し、その過程の動画までアップした値段よりも残念ながら安いです。

 

善良な市民の理想とは、高スペックの高額アイテムを、ベストなタイミングでお得に買うことだと思うのですが。
ネギちゃんは違うのかな?

 

ていうのは置いといて。
本題入りましょう。
ネットで最安値を調査するというのは、はっきり言って愚策ですっていうお話。

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価格.comというサイト。
サイトの運営者があらゆる販売店の販売価格を調査し、比較検討してまとめているものだと思っていませんか?
思ってるでしょ?
違いますよ。
口コミ情報サイトですよ。
上位に連なるネットのショップの数々は、ショップの方からお金を払って掲載を申し出てるんですよ。

 

アフィリエイト広告もいっぱい貼ってあります。
これ始めた人頭いーなーと、素直に感心しました。
超うらやましいです。
何回も何回も何回も見に来てくれるネギちゃんは、いいカモですね。

 

大手家電量販店のそれぞれの実店舗が、価格.comに情報を提供することはありません。
実店舗とは、実際にわたし達が足を運んで、商品を見たり買ったり出来るお店のことを言っています。

 

エディオンネットやケーズデンキWEB、楽天ショップ店など、これらは普通にネットショップ。
価格.comの【ショップの売り場へ行く】
をクリックすると、各店のwebページに飛びますが、実店舗とは別モノであることを理解しましょう。

 

では。
某量販店A店のある日の様子を、ちょっと覗いてみましょうか。

 

平日の正午前。
スエットにサンダルばきのネギちゃんが、おひとり様でご来店です。
ターゲットの商品の前に立ち、ポケットからおもむろにスマホを取り出しました。
もちろん価格.comを開くためにです。
型番を打ち込み、価格比較表を出します。

 

ネギちゃんが狙っている60インチの4K液晶テレビ、店頭価格は258,000円だったとしましょう。
それが価格.comでは、最安値が185,000円でした。
聞いたことのないネットのお店ですが。

 

ネギちゃんは近くにいた男性店員を呼びつけ、「コレ、いくらになるの?」と尋ねます。

 

30代と思われる店員は、ファーストプライスの上から貼られている値札ポップをちらりと見て、慣れた手つきで電卓を叩き、「そうですね… 22万くらいまでなら…。いかがですか?」と笑顔を見せます。

 

少し間を置いて、ネギちゃんは言います。
「ネットではもっと安く出てるんだけど」

 

店員の対応は次の2パターン。

 

【無理です、と断られる】

苦笑いしながら、けっこうキッパリめに言われた時は、本当に無理です。
対抗のネットショップが、何らかの事情で相場よりも桁外れに安いのか。
はたまたA店にとって、大幅な値下げをしてまで売る価値のないアイテムなのか。(←これはメーカーとの商談内容など、大人の事情が絡むことが多いです)
それは分かりませんが、いずれにせよ店員が粘らない時は、無理。
諦めてね!!

 

【ちょっと相談してきます、と言って一旦消える】

脈アリ。
オモテのポップには書かれていないインプロ価格が、価格.comの最安値に近い、あるいは下回る可能性が出てきました。
店員は予めそれを知っていることが多いのですが、「22万くらい」と口にしてしまった以上、小芝居を打つしかないのです。

 

とりあえず売り場を一周お散歩して、ネギちゃんのところに戻って来た店員は、価格.comの最安値よりビミョーに少し高い金額を提示してきました。
185,000円に対して、205,000円。

 

「同じ値段にならないなら、別の店へ行ってみる」とネギちゃんの常套句、出ました!!

 

店員はうっすらと微笑みながら、自分のスマホで価格.comを開き、ネギちゃんが見ていたのと同じページを見せてきます。
そして延長保証、配送設置などの諸費用に触れてきます。

 

大手家電量販店の多くは、メーカー保証1年にお店の保証を付けてくれます。
テレビなら、例えば5年保証。(メーカー保証1年+お店の保証4年)
また、今回ネギちゃんが購入しようとしている60インチの大型テレビなら、配送設置料込みにしている量販店も多いでしょう。

 

実際に最安値ショップの詳細を確認してみると、A店で買うのと同じ条件するには2万円強かかることが判明しました。

 

ネットの小さなショップでは、延長保証は保証会社に丸投げになります。
配送設置サービスを行う人員を抱えていないので、これもまた委託になります。
テレビ本体はどうにかして安く仕入れることが可能でも、その先は手段を持たないことがほとんどです。

 

一応補足。
大手家電量販店のwebショップは別ですよ。
バックボーンが本物ですから。
手続きのすべてをスマホで完結しても、実店舗とほぼ変わらないサービスを受けられます。
その分、価格.comの中ではややお高いですね。

 

保証なんか要らない、設置設定も自分でやるという人は、最初から最安値ショップでポチればよいでしょう。
もしかしたら送料無料のショップが見つかるかもしれません。
わざわざ実店舗に喧嘩を売りに来て、店員からバカにされる必要はないのです。

 

店員の言うことに納得してしまったネギちゃん。
ネットの最安値より2万円高い値段でご成約となりました。
5年保証のために、無料の会員カードも作りました。

 

ネギちゃんは、まあまあ満足です。
60インチのテレビを自分で設置するなんて大変だし、メーカー保証が切れた直後に不具合が出たら最悪だ。
258,000円を205,000円にまで値切れたんだし、成功!!

 

さて。
ネギちゃんは、本当に得をしたのでしょうか?

 

205,000円が本当にお店の限界で、延長保証云々が店員の苦し紛れの言い訳だとしたら、ネギちゃんの勝ちです。
でもここでは、ネギちゃんにとってちょっぴり残酷なオチを与えておきますね。

 

ネギちゃんが価格.comの最安値を出してきた時点で、店員は「勝った!」と思いました。
実はネギちゃんが選んだこのテレビ、258,000円の値札を付けてはいましたが、正体は190,000円だったのです。
家電量販店あるあるですね。
尚、店員の裁量で更にここから5%~10%の値引きが可能でした。

 

ネギちゃんのテレビ、某有力メーカーの上位モデルとして発売されましたが、直後にシステム上のトラブルが多発。
クレームと返品交換の嵐。
アップデートにより、早期に動作は正常を取り戻したものの、メーカーは過剰在庫を持て余すこととなりました。

 

そんな裏事情があって、メーカーは優良取引先のA店に対して、卸値を大幅に下げることになったわけです。
その結果の、190,000円。

 

「コレ、いくらになるの?」と言われて、馬鹿正直に答える店員なんていませんよ。
ネギちゃんにつかまった店員が、22万くらいと答えたのにも、当然思惑があります。
当初彼は、ネギちゃんにレコーダーもセットで買わせる気だったのです。
セットで大幅値引きを演出するために、わざと高めに言ったのでした。

 

しかしネギちゃんは、価格.comの最安値に合わせろと要求してきました。
それがこの世で最も安いと、信じて疑わないネギちゃんですから。
渋られても食い下がる気満々です。

 

190,000円から5,000円値引いて185,000円にしてやることは、この店員にとって容易いことでした。
しかしそんなの芸がない。
客の言い値に従うなんて、無能のすることだ。

 

価格.comには、価格.comを。
うまーく使って、彼は190,000円を205,000円に「値増し」したのです。
はい、ネギちゃんの負け。

 

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